筋膜リリースや筋膜マニピュレーションを行えば痛みや可動域制限が改善するのは事実である。その上での疑問点である。
リリースとマニピュレーションの違いが明確にされていないので、ここでは筋膜リリースに統一して述べる。
[病態]
[評価]
[治療]
書籍等を読んでも納得できる情報がなかったので、職場の部下が最近人気のあるセミナーに参加するとのことで、疑問を託した。残念ながら質問時間は取られておらず、直接講師に質問に行っても「答える義務はない」と拒否されたそうである。本当のところは答えを知らないだけなのだろう。
(痛みと治療の論考集リンク)
【補足】
アナトミートレインを否定する事実を2つ紹介する。
FFD(指床間距離)を足底の筋膜リリースで改善するという現象がある。これをスーパーフィシャルバックラインである足底筋膜、下腿三頭筋、ハムストリングスのつながりで説明されている。しかしFFD測定時の姿勢では足関節は底屈位にあり、下腿三頭筋は緩んでいる(短縮位)。力学的に影響するとは考えられない。
FFDは母指球付近や前腕の筋膜リリースでも改善する。しかし評価の段階で手、肘、肩関節の角度を変えてもFFD(確認は体幹の前傾角度でみてください)は変わらない。筋膜を介して力学的に影響するなら上肢の角度変化でFFDは変化するはずである。ただ母指球付近や橈側手根伸筋の筋腹を軽い痛みが出る程度に圧迫を加えるとFFDは変化することもある。(このメカニズムは神経生理学的なものがあると考えるべきではないだろうか。)
スーパーフィシャルバックラインで説明がつかないと機能的なラインだとかその他に新たなラインを作り、現象を説明しようとする。筋膜は全身でつながっているから、いくらでも新たなライン(トレイン)を作り上げることができる。だから過去に何人かが独自のラインを発表しているのだろう。ここに真実を求めるのは無理がある。
【参考文献】フィリップ・リヒター/エリック・ヘブゲン:トリガーポイントと筋肉連鎖,ガイアブックス,2009